トナカイくんとハッピークリスマス!
「いらっしゃ…、おお、愛梨ぃ~」
「ほら、持ってきたよ」
お店に入り、キッチンに立つお兄ちゃんにお弁当を差し出しカウンター席に座る。
「サンキューな。大事に食わせてもらうからな」
「もう、家でマリさんが料理作って待ってるんじゃないの? 婚約解消されても知らないからね」
「あいつも今日は仕事なの。帰りも遅いっていうし。
こんな日ぐらい愛する妹の手作り弁当食ってもバチは当たらないだろ? ほら、サービス」
そう言いお兄ちゃんがあたしの前に差し出したのはコーヒーとシフォンケーキ。
「これぐらいのサービスしてもらって当然ですぅ~」
口を大きくあけてシフォンケーキを頬張る、あたし。
――あたしは戸田愛梨。
普通科の高校に通う普通の女子高生。2年。
で、
「美味しいか? 愛梨はケーキも似合うなぁ」
仕事をほったらかして両肘を突きデレデレとあたしを眺めてるお兄ちゃんこと、戸田翔太。
あたしと10個歳が離れた実の兄でこの喫茶店のオーナーを務めてる。