イクメンな彼氏

園児たちが楽しみにしていたクリスマス会の日がやってきた。

「時間になったら案内しますので、子どもだけ教室に入って、保護者の皆様は園庭でお待ち下さい!」

門を開けた途端流れ込んでくる保護者たちに大声を張り上げる。
平日だというのに仕事を休んでいる人たちも多いのだろう、保育園の中は多くの保護者でごった返していた。

悠理花ちゃんが出演することにでもなったら、きっと中津さんはカメラとビデオカメラを抱えて見に行くんだろう。

この後仕事に行くのかスーツ姿のお父さんの姿もちらほら見えて、そんな事を考えてしまう。

「それでは皆で一生懸命練習した、大好きなアニメの曲です。
聞いて下さい」

私のピアノに合わせていつもの三割増しの元気な声で子どもたちが歌う。

藤本さんに付き合ってもらって散々練習したおかげで、それほど緊張することなく弾くことができた。

みきちゃんはいつもここの歌詞を間違えるけど今日は大丈夫かな……?
うん、バッチリだ。

この歌は意外と歌詞もいいんだから、保護者の人たちにもしっかり聞いて欲しい。

そんな事を考える余裕もあるくらいだったのは藤本さんに感謝だ。
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