絶望の部屋(再)
「ねぇ一也…。
 
これなんのお金かな?」
 
 
「知らねぇよ!
 
だいたいなんでこの部屋にこんな大金があるんだよ…
 
 
ん?なんか紙があるぞ!」
 
 
「紙?」
 
 
「ちょっと待ってよ。
 
 
えっと…。」
 
 
一也はその紙を読み始めどんどん顔色を変えていった。
 
 
その表情は今まで見たことのない表情で震える手を必死に抑えていた。
 
 
「ど、どうしたの?」
 
 
僕が話しかけたことによって我に返ったのかハッとした表情でこっちを見てきた。
 
 
「な、なんかさ…
 
 
この金さっき俺が殺した4人で8ポイント稼いだだろ?その8ポイントが金に変わって俺宛に8千万円届いたらしい。」
 
 
8千万円…
 
 
あまりの額に返す言葉すら失いそうだった。
 
 
だがこの8千万円を貰って1番辛いのはたぶん一也自身だ。
人を殺して稼いだ金を使えと言われてるみたいなものだ。僕らは決して殺し屋になりたいわけじゃないからこのお金を貰った精神的ダメージは計り知れなかった。
 
 
「どうするのこのお金…?」
 
 
「いや、引きずっててもなんだし使うしかないだろ!
 
 
やっちまったもんはもう帰ってこないんだから使うのが責めてもの礼儀だろ…たぶん」
 
 
「まぁ確かにね。
 
 
使わずに捨てるのも勿体無いもんね…」
 
 
一也が無理をしているのは様子からは感じ取れたがここで一也の行動を否定するのは助けてもらった僕からすれば大きく間違った選択になる。
 
 
だから正直な気持ちは使わずに捨ててほしいがここは一也の意見に賛同するのがいいと思い使うことを勧めた。
 
 
「8千万か…
 
 
俺この金4人で割って使おうと思ってるだけどどう思う?」
 
 
「4人?4人ってあの2人もってこと?」
 
 
「あぁ、だって最初のゲームに生き残れたのはあの2人のおかげでもあるしさ。」
 
 
「確かにそうだね。
まぁ一也のお金なんだから一也がきめるべきだよ!」
 
 
「そ、そうだな。」
 
 
命1つが1千万円。
安い高いじゃなく今僕は命の重みを目の前に見せつけられた気がした。
 
次自分がいつこの紙切れに変わるかわからない状況に立ってるのに喜んで使えるわけでもなく、でも使わなければ本当の意味でその人達の死はなんのためにもならず捨てられたゴミと同じになってしまう。
 
 
これが絶望の部屋のやり方だった。
僕は命を安くも高くも見ない。ただみんなで生き残れるようにその場その場に必要なことをするしかないと改めてここで思い知らされた。
 
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