あのね、先生。

優真はあまり普段から好きだっていう方じゃないけど、ちゃんと想ってくれてるっていうのは伝わってたよ。

大事にしてくれてるっていうのは、誰よりもあたしが感じてたよ。

「…あのね…」

だから言えなかった。

心の中に優真以外の人がいるのも。

忘れると言ったのに、全然先生のことを忘れられてなかったことも。


「あたし…」

優真、優しいから。

きっと気付いてるのに知らないふりしてくれてたんだよね。

「学祭の日に、先生に会ったの」

だからほら、驚かない。


「そ、良かったじゃん。久しぶりに会えて。話ってそれ?」

聞きたくないって言ってるみたいに、話を終わらせようとする。

だからやっぱり、全部気付いてて何も知らないふりをしてくれてたんだって、今さら思う。
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