あのね、先生。
「そういえば先生、今日学校は?休みだっけ?」
「学校は休みだけど、午後から部活あるんだよね」
「そっか…、わざわざごめんね」
時計を見ると、もうすぐお昼を過ぎようとしていた。先生はもう行かなくちゃならない時間。
「俺、どうしても今日茉央ちゃんに会いたくて、中村先生に頼んで特別に今日だけ顧問やってもらってんの」
「…え?」
中村さんが美術部の顧問?
今日だけ限定の?
…そんなの、よく中村さん引き受けてくれたなぁ。めんどくさいの嫌いなのに。
「わっ…!」
先生の言葉を理解するのに少し時間がかかって、何も言えずにいると手首をキュッと掴まれて引き寄せられた。
「高校の卒業式のときは直接言えなかったから、今日はちゃんと、面と向かって言いたかった」
高校の卒業式の日、美術準備室に行っても先生の姿はなかった。その代わりにあの綺麗な花が置いてあったんだっけ。
【卒業おめでとう】
そう書かれたメッセージカードと一緒に。