あのね、先生。
「嘘ってお前…」
「白城くん嘘下手なんだよ」
「…別に下手じゃない」
「下手だよ」
嘘?
何で高橋がそんなこと言うんだよ。
だって俺別に、咲良と蓮くんがうまくいけばいいなんて思ってない。
「ほんとに篠原先生に来てほしかっただけなら、今そんなに悩んでないでしょ」
立ち止まった高橋。
気がつくともう高校の前まで来ていた。
文化祭で賑わう母校のグラウンドで、あの時と変わらない笑顔で案内のチラシを配る蓮くんを見つけた。
「分かってるよ、茉央と加地くんを別れさせたいわけじゃないんだよね」
何で。
何で高橋には分かるんだろう。
「あたしもね、そうだから」
そう言って俺を見上げた高橋の目には、薄く涙の膜が張ってた。