あのね、先生。

「嘘ってお前…」

「白城くん嘘下手なんだよ」

「…別に下手じゃない」

「下手だよ」

嘘?

何で高橋がそんなこと言うんだよ。

だって俺別に、咲良と蓮くんがうまくいけばいいなんて思ってない。


「ほんとに篠原先生に来てほしかっただけなら、今そんなに悩んでないでしょ」

立ち止まった高橋。

気がつくともう高校の前まで来ていた。

文化祭で賑わう母校のグラウンドで、あの時と変わらない笑顔で案内のチラシを配る蓮くんを見つけた。


「分かってるよ、茉央と加地くんを別れさせたいわけじゃないんだよね」

何で。

何で高橋には分かるんだろう。

「あたしもね、そうだから」

そう言って俺を見上げた高橋の目には、薄く涙の膜が張ってた。

< 63 / 328 >

この作品をシェア

pagetop