だから、好きだって言ってんだよ
イジワルなアイツ


「よし、完璧!」


部屋の全身鏡の前に立ったあたしは、クルッと一回転してニコッと笑う。



派手過ぎず地味過ぎず、どっからどう見ても普通の女子高生だ。


やっぱり、最初が肝心だって言うもんね。


浮かないように、目立ち過ぎないように、スカート丈は膝より少しだけ上にした。


ホントはもう少し短くしたいけど、入学早々先生や先輩に目を付けられたくはないから、しばらくは大人しくしとくんだ。



ーーコンコン


気合いを入れていると部屋のドアが突然ノックされた。



「愛梨(あいり)ー?起きなさい、遅刻するわよ」



お母さんの声が聞こえてハッとする。



えっ?


もうそんな時間!?



慌てて時計に目をやる。



ただ今、8時10分……


じゅ、10分!?



「ウソっ!!」



顔からみるみる内に血の気が引いて行く。


いつの間にそんな時間になってたの!?


信じられない。


新しい制服が嬉しくて、思わず浮かれてしまっていた。



ーーガチャ



「あら、起きてたの?なら、さっさと下に下りてらっしゃい」



ドアが開いたかと思うと、呆れ顔のお母さんがヒョイと覗いて淡々と言う。



ヤバい、遅刻するっ!


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