狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅣ―ⅲ 近づく漆黒の翼


漆黒の翼を背に持つ彼がさらに身を乗り出すと…悠久のものではない気配が凄いスピードで近づいてきた。

「…チッ」

不機嫌そうに舌打ちした彼は軽く枝を蹴り、その場を離脱する。そして、悟られぬようさらに奥にある大きな木の影に身を隠した。

「この気配は…精霊か」

目を凝らしてみると小さな光の塊が真っ直ぐ悠久の城を目指し速度をあげ移動していく。

『……』

精霊王より書簡を預かった光の精霊はわずかな光の動きに自身の動きは止めず、あたりに意識を集中させ…その正体がわかった彼女はまた悠久の王のいる城へと視線を向けた。


『…紅の瞳の王…』


背後に感じる彼の視線を受けながら光の精霊は小さく呟いた。王として彼の事は尊敬に値する存在なのだが、精霊王と彼は仲が良くなく互いに距離を置いている。なので光の精霊がわざわざ挨拶に出向くほどの義理もないのだ。


「精霊王の使いか…」


気配を隠しきれておらず、おそらく相手に悟られていると感じた彼は姿を現し大きな樹木に寄りかかり、その小さな姿を目で追った。

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