狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅤ―ⅰ 王の夢Ⅰ


楽しい昼食の後、キュリオはアオイを連れて執務室へと向かった。お腹を満たした後も、彼女に眠気が襲ってくる気配はなく…キュリオの顔が見える位置にあるソファに座らされ、両脇をクッションで固定されたアオイ。思わぬ方向へ倒れてしまわぬよう女官が考えたものだったが、これがなかなかによい。



アオイがベッドから落ちてしまわぬよう、寝台を移動しようと思っていたキュリオだったが、彼女の背後に何か柔らかい物を壁として置いてしまえばいいのかもしれない。




(いや…そんな事をしなくても…私が彼女を抱いて眠れば良い話か)




次から次へとそんな事を考えていると、手元の…目を通すべき書類がいっこうに減っていない事に気が付いた。




「…今は仕事が先だな」



普段の彼からは考えにくい光景だった。そして、そんな自分に小さく笑い、気を取り直すように羽ペンを手に取る。



やがて、仕事に集中してしまったキュリオがこちらを向かないようになり…アオイはだんだん暇になってきた。



「……」



幼子はふと、その視線を彼の背後へと向ける。
すると広い窓から見えるのはどこまでも続く悠久の景色。さらにそれを彩るのは…どこかでさえずる鳥たちの声と、風に舞う美しい花びらたちだった。




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