狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅤ―ⅵ キュリオの片想いⅠ



湯浴みも終わり、夕食も無事済ませたキュリオとアオイは早めに彼の自室へと戻ってきた。彼女は昼間に転寝(うたたね)をしたくらいで、それからは一睡もしていない。大樹の露がいつまでもつかわからないが、本人の自覚以上に体は疲労しているかもしれないとキュリオは考えていた。



部屋に入り、いくつかの燭台に火を灯す。



「部屋を暗めにしておけば…アオイもじきに眠くなるだろう」



彼女の頬を指先でなでながらキュリオは優しく微笑んだ。
そして彼女を腕に抱いたまま、テラスへのガラス扉を開く。



(あの騒ぎからまだ一日も経過していないのか…)



昨日のこの時間、間違いなく彼女の体に異常はなかった。キュリオは…もしやと思いながらアオイへと視線を落とし…腕の中へと癒しの光を集めていく。


するとキラキラと輝く光の粒がアオイの胸元で弾け、彼女の柔らかい髪が風を受けてサラサラと揺れている。それはまるでキュリオの優しい愛のように彼女の全身を包み込んでき…癒す場所がないとわかると、光は徐々にその輝きを失っていった。


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