狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

ⅩⅩⅥ―ⅲ 砕けた宝珠Ⅰ


物腰柔らかく、女性とも見まごうほどの美貌をもつ青年がエデンを送り出したあと…廃墟と化したこの建物の中に一人の男が姿を現した。



入ってきた男の気配に気が付いた青年はゆっくり振り返る。



「…おかえりなさい九条」



「……」



九条と呼ばれた彼は視線だけを寄こし、無言のまま通り過ぎようとする。



「先ほど…エデン殿が見えられましたよ」



するとピクリと眉を動かし立ち止まった九条。



「…未練がましい男だ」



漆黒の衣を纏った彼の瞳は夜をうつしたアメジストのように美しい。しかし…今、その瞳は暗くかげり…彼の心のように深い闇に沈んでいる。



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