狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

XXXI―ⅴ 獲物Ⅴ

―――ﾋﾟﾁｬ…




濡れた音が響き、アオイの血の色に染まった涙とともに頬から傷口へと舐め上げる青年の優しい舌と唇。



ｸｽﾘ…



時折目元に笑みを浮かべながら幼子の肌を吸い続ける美しいその紅の瞳には、先程ウィスタリアに向けたような怒りはどこにも感じられず…彼の優しさがにわかに顔を見せ始めていた―――




「お前の血はどんな蜜よりも甘く…極上の香りを放っている」




「…ぅ、…」




浮かされるように朦朧とする意識を必死に保ちながらアオイは尚も後方の女官を心配し視線を逸らさず、崩れ落ちる体を支えるようと懸命に青年の胸へ腕をつっぱっている。




「心配するな…そこの二人ならキュリオが何とかするだろ」




アオイをなだめるように彼はピンク色の彼女の頬に優しい口付を落とした。