狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆アオイの適職?そのLXXXⅡ


夜空に羽ばたくキュリオは城に向かって真っすぐに突き進んだ。


すると…


「あれは…」


キュリオが目を凝らした先には栗毛の馬に跨り、賢明に彼を走らせているカイの姿があった。


「カイ!」


頭上から響いた偉大な王の声にはっと顔を上げたカイは全身に風を受けたまま力の限り叫ぶ。


「…キュリオ様っっ!!お急ぎくださいっ!!アオイ様が…っ…!!」


「…アオイが?」


一向に馬のスピードを緩めないカイに倣(なら)い、そのまま旋回したキュリオは彼に並行しながら羽ばたき続けた。


「はいっ!アオイ様曰く…学園の教師らしいのですがっ…センスイという男が現れて…っ…」


「…っ姫様が連れ去られましたっ!!申し訳ございませんっっ!!!」


「…なん、だって…?」


ギリッと悔しそうに歯をかみしめるカイと…一瞬、無音に包まれたかのように言葉を失ったキュリオ。だが…


「…やつはこの方角に向かって行ったのだな…?」


「はいっ!!」


「…わかった」


そう短く言葉を発したキュリオの纏うオーラが激しく燃え盛る炎のように沸きあがり、彼全体が銀色の眩い光包まれていく。やがてそれはビリビリと音を立て、迸(ほとばし)るエネルギーが雷撃のように鋭さを増し…傍を走るカイや、馬の足元を激しく打ち付ける。


「ヒヒィインッ!!!」


馬は驚き、カイをその背に乗せたまま大きく嘶いた。


「…くっ…!!」


若い剣士は手綱を強く握り、振り落とされる寸前のところで耐えたが…


「お前はそのまま城に戻れ」


彼に下ったのは無情な一言だった。


「…っなぜですっ!?俺は…っ!アオイ様付きの剣士なのにっっ!!」


必死に縋り付こうと馬を走らせるカイだったが、キュリオとの距離はどんどん離れていくばかりだ。この悠久で最速の翼をもつ彼に追いつけるはずがない。



「足手まといだ」



わずかに振り返った王の瞳からは彼の許可無くして絶対に抜いてはならぬ…まるで氷の杭が放たれたようにカイの全身をその場に縫いとめてしまった。


「…っ…!!」


我が王ながらゾクリとするその圧倒的な威圧感を前に、手綱を握るカイの手が恐怖に震えていく。


(…アオイさ、ま…)


"ごめんねカイ…また私のせいでお父様に叱られてしまったのでしょう?"


あまりにも無力な自分が情けなく、悔しさに涙を滲ませた生粋の剣士・カイ。そして浮かんでは消える…姫君の優しい言葉と、悲しそうな表情。



「…申し訳ありませんアオイ様…守りたいのはいつでも貴方様の笑顔だけなのに…っ…」






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