狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのXLⅡ


―――長い夜が明け、ようやく白み始めた悠久の地を爽やかな風が吹き抜けてゆく。


その国の中心、王の住まうこの悠久の城では健やかな寝息をたてる可愛らしい少女と、もうひとり…


「ん…」


身を寄せ合いながら眠っていた美しい銀髪の少年が目覚めようとしていた。


「……」


薄く目を開いた彼の瞳は澄み渡る青空の色。まるで平和を象徴する悠久を思わせるかのようなその瞳にうつったのは…


(…誰だ?)


自分よりも大きく、なぜか安心しきった表情で眠りについている少女の姿。


(…私が部屋を違えたのか?)


まさかと思い、起き上がった彼は部屋をぐるりと見渡してみる。


「…私が間違ったわけではなさそうだな。ならば…」


「おい…」


眠っている少女を起こそうと、彼女の肩に手を伸ばした彼だが…


「……」


柔らかな髪の間から見えた真っ白な肌の中、まるで己の存在を主張するかのように赤く色付いたその印(しるし)。


(この女、誰かの"所有物"ということか…)



―――ズキン…



なぜか痛んだ少年の心。彼は自分の胸を押さえながらポツリと呟いた。


「…私に病はない。この痛みは気のせいだ」


少年はもう一度、隣りで眠る少女に目を向けると…


「いつの間にベッドへ入り込んだ?私はセシエル様に仕える身だというのに…」


「…セシエル様…!?」


そう言いながら銀髪の少年はハッと目を見開き、勢いよく部屋を飛び出していく。



バタバタと息を切らせながら駆けていく少年が向かった先…それはこの国で最も崇高にして神聖な人物、悠久の王・セシエルの部屋だった―――。



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