狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのXLⅣ


ズカズカと大股で歩いていくキュリオに腕を掴まれ、アオイはキョロキョロとあたりを盗み見る。


(…ここはどこ?この方は間違いなくお父様のはずなのに…私の事がわからないみたい…)


ウーンと眉間に皺を寄せ、別世界に来てしまったのかと頭を抱えているアオイ。


(鏡のように反転した世界があると…昔何かで聞い事があったけれど、それとはまた違う気がする…)


それにどうみてもここは悠久の城で間違いない。構造はおろか、細部に至るまでアオイの知るあの王宮とまったく同じなのだ。


やがて立ち止まったキュリオ。アオイの腕を掴んでいたその手を離すと…


「…おい女、ここからはセシエル様の御前だぞ。言葉は慎めよ!」


鋭い目つきで釘を刺され、アオイは萎縮しながら頷いた。


「は、はい…お父様…」


「…だから私はお前の父親ではないと…っ!!…これ以上付き合っていられないな。姿勢を正せ。…行くぞ」


「うぅ…っはい…」


(…お父様の上におられる方…?どういう事かしら…)


アオイの知る悠久の常識が今、簡単に崩されて行こうとしている。そして…


―――コンコン


「失礼いたします!セシエル様!!キュリオです!」


凛とした声高らかに、幼いキュリオが巨大な扉の前で申し出た。


(この扉…お父様のお部屋と同じ模様…)


思わず見上げてしまったアオイの耳に、穏やかな声が響いた。


『どうぞ』


(この声の主が"セシエル様"…?)


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