狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXⅥ

「そして、どうも引っかかる部分があってね」


「…え?セシエル様でも…?」


「あぁ、問題はこの王子さ。物語の序盤にも一度顔を見せている」


「…あっ…、私見落としていました…」


幼い彼女の身を案じた友人により、近づこうとする彼は行く手を阻まれてはいるが、たしかに王子の姿が描かれている場面がある。


「年をとっていない…?」


「そうだね。序盤に出てきたのが彼の父親である可能性は低いだろう」


「はい…」


「本当に不思議な物語だ…まだ見つけていない謎がありそうだな」


顎に手をあてて本を覗き込むセシエル。そして頷きながらページをめくるアオイ。
そして最後のページは満開に咲く花の中を歩く彼女の後姿が描かれているのだが、目を凝らしてみると…


「あ…セシエル様、これって…」


その一角、花が踏みつぶされ、浮かび上がる闇は男の影のようにも見える。


華々しいラストの裏に見え隠れする彼女の暗い運命。今さらに気付かされた物語の奥深さにアオイの手は震えた。


「…これは私も気づかなかった」


「なんだか私、この物語…怖くなってきました」


童話へと近づけていた顔を離したアオイは眉間に皺を寄せたままセシエルの顔を不安そうに見つめている。


「すまない…私が変なことを口にしてしまったからだろう?"お父様"との大切な思い出を台無しにしてしまったね」


優しく肩を抱き寄せられ、彼の広い胸元に体を預けたアオイ。


「いいえ、セシエル様がいなかったら…私、自分の勝手な判断でこの物語を都合よく終わらせていましたから…」


(セシエル様の見解はきっと正しい…この子は王様なんだ。そして…逃れられない永遠の孤独…愛する人の傍にいられないのは皆に危険が伴うから…)


(…たった一人で棘(いばら)の道を歩む…一体だれのために…?)


もはやアオイの胸に残るのは彼女の勇敢さや優しさではなかった。

そして…この物語を残した作者は、少女の何かを知っている人物なのかもしれない。


「…それでいい。彼女の言葉にあるだろう?"自分の幸せとは愛する人々が幸せになる事"だと…。少なくともこの子は自分の意志でその道を選んでいる」


「…はい…」


「たしかに、別の道があったかもしれないというのは否めないけれどね」


「……」


(…別の道…まだ王様になっていないお父様…。今ならもしかしたら…)





そして数年後、現在赤ん坊であるアオイがこの年に追いついた頃…






物語の最後で花を踏みつぶし、浮かび上がった男の正体が明らかになる。






それはまだ遠い…もう少し先の未来での話だった―――。






< 611 / 871 >

この作品をシェア

pagetop