狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

✿ショートストーリー☆キュリオの願望?そのLXXⅨ

「…驚くことではない。ヴァンパイアの王や冥王を見てみろ」


「ヴァンパイアの王様と冥王様…?」


「やつらがどれだけ自国の民を殺していると思ってるんだ。その目付きが気に食わない、態度が気に食わないと理由をつけては大虐殺を繰り返しているのだぞ」


「…そう、なんですね…私…そこまでは…」


(…そんな話聞いたことがないけれど…この時代では当たり前の事なのかしら…)


どこか違和感のあるキュリオの話だが、"血を好む一族"に"魂を狩る王"ともなれば穏やかではないのかもしれない。


「それだけ狂った王にもなれば民が反乱を起こすのは当たり前だが、まっとうな道を歩む王ならばそのような事はまず起きないはずだ」


「では…その二大国の王様は…?彼らは…一体どうなって…」


「命を狙われたとしても無論、すべて返り討ちだ。神具を持つ王に勝てるわけがない。特に上級の王の神具は一国に終焉を迎える事が出来るほどに強大なものなのだからな」


「…一国に終焉を…」


あまりにも非現実的な話に、アオイの背筋を冷や汗が伝う。
つまり王である限り、自ら治める国を生かすも殺すもその手にかかっているということだ。


本来、それはとても恐ろしいことなのかもしれない。しかし…その事になぜか安堵したアオイ。


少しでもキュリオの身を危険にさらすものがないのはやはり嬉しいのだ。


(よかった…)


「……」


ほっとため息をついた彼女をキュリオは見逃さなかった。


「やっぱりお前…おかしなやつだな」


「あ…ごめんなさい…」


あまりにも不謹慎だったと、アオイは己を叱咤した。どんな事があっても血が流れる結末を望んで良いはずがない。


「それで…お前の童話(フェアリーテイル)は完結か?」


今のアオイに取り乱した様子はなく、どこか安心した彼女を見る限り…不安のひとつが取り除かれたと判断したキュリオ。


「…出来ればもう少し聞いて欲しいです」


「この際だ。最後まで言ってみろ。今さら何を言われてももう驚かないだろうからな」


「…はい、わかりました」


ようやく少し笑うようになった彼女だが、その瞳の奥に宿る悲しみがまだ癒えていないように思える。




「…ここからは私のお願いです」




「キュリオ様…セシエル様も…どうかご自分のために生きてください」





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