狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その1

いつもの時間ならば夕食も終え、キュリオの部屋で穏やかな時間を過ごしているはずのアオイ。しかし彼女はまだ大勢の生徒たちが賑わう教室の一角に留まっていた。


「どう?そっちの色塗り終わりそう?」


「うんっ!もうすぐ完成かな?」


「オッケーッ!じゃあ端からいくよーっ!」


「ラジャーッ!!」


体育着に着替えた女子生徒たちが看板を飛び越え、色塗りが終了した部分へ飾り付けを施していく。

授業中はもっぱら死んだ魚の目をしている彼女たちだが、この時間になっても生き生きとしている理由がこれである。


「とうとう明日は前夜祭だねっ♪夜にはお城の魔導師様たちが光弾の打ち上げに来て下さるらしいわよ!」


「本当っ!?いやぁんっ!お近づきになれちゃったりするのかしら!!」


「王様は!?キュリオ様はいらっしゃってくださらないの!?」


「いくら王立学園の学園際だからって来るわけないじゃん…」


「だ、だよねぇ…」


一斉に落胆したようなため息が漏れ、それまで華やいでいた空間にモノクロのトーンが落とされたように暗くなる。


そしてその様子を遠くに聞いていたアオイ。


「…お城の魔導師様が光弾の打ち上げに…?」


(アレスも来るのかな?)


キュリオが表立って現れないのはアオイも十分承知だ。
よっぽどの記念式典ではない限り、国のトップが姿を見せる事はないからだ。


「…ん?何してんのアオイ」


派手系女子たちの会話に気を取られているアオイを視界に捉えたミキが、背後から手元を覗き込むように声をかけてきた。


「あ…ごめんねミキ。何でもないよ」


「大丈夫?ちょっと休憩しよっか?」


ミキのアオイに対するイメージはこうだ。


「アンタ寝る時間早そうだもんねぇ…っていうか大好きな"お父様"はよく許してくれたね?こんな時間まで学校にいること。絶対帰ってこい!って許してくれないと思ってたよー」


これまで数々の出来事から、超・過保護の父がいることをイメージされているアオイ。


「う、うん…実はお父様、あまり良くは思っていないんだけれどね…」


アオイは悲しそうに手元を見つめながら、可愛らしい衣装の裾へとリボンを縫い合わせていく。


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