狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その67

アオイが消えた日の夜…。


読みかけのままになってしまった童話(フェアリーテイル)を手に空を見上げた幼いキュリオ。


「私が待つ未来に…アオイは……」


あれほどまでに父親を慕っていた彼女の様子を見るに、遠い未来の自分とアオイは良好な関係であるに違いない。

しかし…


「…私はここにもいるのだぞ?」


瀕死の彼女がこの時代に留まるのが危険だという理屈は十分承知しているつもりだ。

そして、彼女の肉体が消滅したとき…その魂がどこに飛ばされるかもわからない。


「セシエル様はなぜそうまでして彼女を…」


(…五百年後の悠久が危険に晒されているということなのか…?)


更に…やむを得ず帰したとわかっていながらも…幼いキュリオは未来の自分にさえ嫉妬せずにいられない。


「天秤に架けられて負けた…とは思いたくないものだな」


彼らしからぬ愚痴がため息とともに口の端から零れ、キュリオは寂しそうに視線を落とした。


「…たかが五百年…か…、…長いな……」


この時ばかりは膝を抱え、顔を伏せてしまったキュリオ。


(…五百年待って…アオイと居られる時間はどれくらいだ?…王とは一体…)


一心にセシエルを想い、人生のすべてを我が王へ…と誓ったキュリオだが、幼くして自身が次代の王である現実を目の当たりにしてしまったのは幸か不幸か…。

翌日から彼は次代の王になるべく、現王・セシエル直々の厳しい指導を受けることとなる。




そして同じ日の夜―――…




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