狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

その69

『…<慈悲の王>が聞いて呆れるな…』


「…わからない事だらけださ。なぜあの子が彼らを引き寄せるのか…。元を絶てば全てが丸く収まるのだと思い込んでいたんだ…」


『……』


翡翠色の瞳が何か言いたげにセシエルを見つめる。

すると…


「しかし…状況はもっと複雑だった。黒幕を見つけるどころか…得体の知れないものを見てしまった気分だよ」


『…何が言いたい…』


「……」


いつも無気力だと思われても仕方のない精霊王の彼が珍しく深い説明を促す。しかし、小さく息を吐いたセシエルは"わからない"とばかりに首を振った。


「…遠い未来、キュリオが君に助けを求めてくるはずだ。私がそう教えた。あとはそこでの君に判断を委ねる」


『……』


「万が一、…君でも勝てない相手だと思ったら…」


「キュリオが娘として育てている少女を殺してもらいたい」


『…自ら手を下さなかった理由はこれか…情でも移ったか…?』


「そうだね…私が愛するこの悠久で、一瞬…共に穏やかな時を過ごせたら…と願ってしまったんだ。初めての感情だったよ」


『…おかしなこともあるものだな…悠久以外に興味を示さぬそなたが…』


「あぁ…ほんのわずかでもこの国が危険に晒される可能性は絶たなくてはならない。私はこの国の王だ。本来迷う事さえ愚かで、罪深きことなのかもしれない…」


『……』


再び歩き出した精霊王のあとをゆったりとした足取りでセシエルが続く。


『…刻の流れにさえ逆らうそなたの事だ…よもやこのまま終わるわけではあるまい…』


振り返らぬまま問う精霊王にセシエルが含みのある笑みを浮かべた。





「それは君次第…かな?」




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