狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

思い出せない言葉

(着物が違う…)


膳を運んできた女中の着物の丈はくるぶしに届くほどの長さしかなった。

そして…にこやかに座してる煌びやかな女性をもう一度見たアオイは何か思いついたように声を上げた。


「…あっ…」


驚いたようなアオイの声に顔を向けた彼女。


「…何かお嫌いなものでもございましたか…？」


心配そうに近づいてきた彼女はとても良い香りがする。


(なんだろう…お香の匂い？)


ふわりと香る大人の色香にあてられそうになりながら、アオイは首をぶんぶんと振って答える。


「大和(やまと)…」


「……」


次の言葉が出て来ず、口ごもるアオイに彼女の瞳が一瞬鋭くなった気がする。


(なんて言うんだったっけ、清楚で…奥ゆかしい？女性の事…)


「大和…な、な…？」


聞き慣れない言葉をなんとか思い出そうと頭を捻るアオイにアランが笑いかける。


「アオイさんが言いたいのは…"大和撫子(やまとなでしこ)"かな？」


「そうです…！さすがアラン先生…っ…」


「…大和撫子さんって言いたくて、思い出せなくて私…」