狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

キュリオの狙い

キュリオはベッドわきの蝋燭に火を点けると、自身の首元をくつろげた。

いつものように帰宅したあとの彼の行動となんら変わったところはないが、傍らに横たわる不自然なアオイの姿があった。


「…おなかはすいていないかい？」


蝋燭の火に照らされ、黒光りした偽りの髪を纏ったキュリオはまるで別人のようだ。

初めて訪れた館のせいもあるだろう。

アオイの脳は目の前の男をキュリオと認識していながらも、小さなその肩はわずかな緊張に萎縮していた。


「い、いえ…私は大丈夫です。お父様こそ何も口にされていないのでは…」


「…私の心配はいらないよ。飲み物を持ってくるからここで待っていなさい」


上半身を傾け、アオイの頬をひと撫でしたキュリオは立ち上がり扉を出ていく。


「……」


(お父様は最初からこの館に泊まるおつもりだったのかしら…)


今朝の会話を思い出していたアオイの考えは確信に変わる。




"…アラン先生の泊まる部屋、やっぱり他の先生たちも一緒なのかなって…"


"心配いらないよアオイ…すでに策は講じているからね"