狂気の王と永遠の愛(接吻)を 【第一部 センスイ編収録版】

番傘の使い道

「ひとつ言っておくが…番傘は武器じゃない。最初からお前の血を浴びないために用意したものだ」


先程の傷など気にする様子もない女は背筋も凍らせるほどに冷たい視線を男へ浴びせる。


「…ｯﾋｯﾋｨｯ…!!」


番傘よりだらしなく滴り落ちた男の血液が地面にあらたな血だまりを作っている。

さらに女の手には鋭く輝く刀が握られており…男の汚らしい血がこびりついていたのだった。




「てめぇ…っ!!お、おっ、女のくせに刀なんか持ちやがってぇええっっ!!」


「もうそんな時代じゃない。お前のような輩がいるから持たざるを得ないだけだ」


容赦のない女は罪人の首を跳ねようと右手に持った刀を振り上げた。


「お、俺を殺して勝ったと思うなよぉおおっっっ!!なんで俺が捕まらなかったかわかるかっっっ!!!」


「差し詰め…金のあるやつが背後に絡んでいるというところか？」





―――ﾄﾞｰｰｰﾝｯ!!!





と、これ以上の無駄話は不要と判断した女の背後で新たな炎が上がる。

爆発にも似た地鳴りに振り向くと…




「…なっ…!!」




至るところで火の手が上がっており、人々の逃げ惑う悲鳴が飛び交っていたのだった―――。