薫子様、一大事でございます!

「北見さんという頼りになる男の方もおりまして」


――!!


「なかなかの切れ者なんでございます」


滝山が私の代わりにスラスラと答えてしまった。


「あら、そうなの」

「あ、う、うん……」


何かを勘繰られているわけではない。

滝山以外の男の人がいることを心配に思われているわけでもない。


それなのに、お母様の視線が向けられて、訳もなく頬が熱くなる。


「人を雇えるとは、なかなか立派なものだぞ、薫子」

「……はい、ありがとうございます」


北見さんの働きに見合ったお給料じゃないけれど。
それは、ここでは黙っておこう。


「旦那様と奥様の居所を見つけてくれたのも、その北見さんでございまして」

「まぁ。それじゃ、いつかお礼を言わなくちゃならないわね。ねぇ、あなた」

「そうだな」


北見さんの名前が出ただけだというのに。

心臓の音が、耳のすぐ奥でドクンドクンと響いて仕方がなかった。


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