薫子様、一大事でございます!

「ちょっとちょっと、あんまり不自然な行動はしないで」


そんなに挙動不審だった?


私の袖を引っ張り、麻紀さんが軽く釘を刺す。


麻紀さんにも悟られないよう、ごくごく自然にしていたつもりなんだけど……。


「ごめんなさい」

「店に入っても、変な行動は謹んでね」

「……はい」

「あ、それから、店長には新人を連れて行くって話してあるから」


なんて手回しの早い。


麻紀さんによると、店には登録しているだけで20人のホステスがいるらしく、常時15人は出勤しているらしい。

普通がどのくらいなのか分からないけれど、多分、規模の大きなお店の部類に入るんだろうと想像はできた。


「本当に私にホステスのフリなんて出来るでしょうか」


不安がつい口をついて出る。


「こういう依頼は今までなかった?」

「そうですね。恋人のフリならありましたけど」

「そっちの方がよっぽど難しいじゃない。新人ってことなんだし、不慣れで全然問題ないわ」


麻紀さんの言葉にホッとしたのだった。

< 400 / 531 >

この作品をシェア

pagetop