トリックオアトリート


「にゃあ」


白い煙の中から黄色と青い異様な服を着た少年、ライルがマンションの一室に現れた。

ライルの瞳は赤く輝く宝石のよう。


『ただいま、アビー、エメラル、ファル』


擦り寄った白猫、アビーの頭を撫でた。

アビーはもう一度小さく「にゃあ」と鳴くとライルの側を離れた。


「どうだった?魔王の子供は」


エメラルと呼ばれた小さな男の子がテレビの前に置かれたソファに寝転びながら尋ねた。

机の上にはの見かけのジュース。

エメラルの手元に握られた丸い形のワイングラスにはファルと呼ばれた人形の魚が入れられていた。

人魚姫の様に下半身が魚、上半身が人間だった。一つ違うのは、その大きさ。

ファルはワイングラスに収まるほど小さかった。


『さすが魔王の子供だよ、ゾクゾクする。
動揺してもなお揺るがない剣のような殺気。』


「相変わらずドMだな、お前は」


「今更でしょ、エメラル」


2人はライルを無視して笑った。

ライルは笑いながらエメラルの頭に手を差し出した。


『戻れ』


どうやら怒った顔を隠すために笑を貼り付けていたようだ。

ライルの一言でエメラルは消えてエメラルの着ていた洋服の中から小さなパンダが姿を現した。


「ぁゎゎヾ(・ω・`;))ノ」


慌てるファルを少し睨んだライルは出てきた小さいパンダを抱いた。


『僕をバカにしたのは誰?』


『僕に逆らっちゃダメだよ、エメラル』


抱いていたパンダを睨んだライルはエメラルをソファの上に戻してワインを開けた。


『今頃ホランはどうしてるかなぁ〜♪』


楽しそうに頬を緩めたライルは…………
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