弟、時々恋、のち狼

壁に飾って売られている時計たちが、カタカタと鳴り始めた。

まずい。もうすぐ、暴走が始まる。


「どうかした?」


ふいに、肩を叩かれた。

落ち着いた声。

とたん、時計の共鳴が止む。


「どこ……行ってたの……?」


振り向くと、ツカサは少しだけ驚いた顔をしていた。


「どこにもいないから……電話も、出ないし……」


ほっとしたと同時に、気が抜ける。

もう、大丈夫。

言いようのない、安心感。


「泣くの?」


「……泣かないよ」


くすりとした笑いは、以前のように皮肉なものではなく、温かい。
アタシは妙に気恥ずかしくなって、そっぽをむいた。

何となく、怖くて冷たくい印象だったツカサの、こういう表情は、アタシを、やたらと落ち着かなくさせる。
画していた一線を、見失いそうだ。


「大丈夫。オレがミフウを守るから。安心して頼ればいい」


肩を引き寄せ、甘くささやく。


「ちょっ!!」


人の目を気にしない大胆さに、慌てて押しのけようとすると、ツカサはさっと身をかわした。


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