我妻はかごの中の鳥


「バカ、熱上がってる」


そう言いながら運ぶと、ぼうっと視線を迷わせる。

「…あ…」

小さく声をあげたかと思うと、ぷいっと俺の胸板に顔を背け…たって言うのかこれ。

とにかく、胸板に顔を押し付けた。


「…瑠璃?」


じんとした熱さが、触れた箇所に伝わっていく。

距離は0センチ。

なのに、瑠璃の考えがわからない。


「風邪、辛い?薬もう少し強くしておこうか?」


ふるふる、と首を振る。

…何がしたいのかわからない。


柔らかくベッドに乗せ、布団を被せる。

よくなってほしくて、さらさらと頭を撫でるが、首を振って拒絶された。


熱で機嫌が悪いのか?

なんて考えていたら。


「…ごめんなさい」


小さな声が聞こえた。

潤んだ瞳に赤い頬。
熱い息、荒い呼吸。


「…移せ」


脈絡のない謝罪に不安はあったが、きっと熱で気が弱くなっているのでは…と推測した。

だから、そう言ったのだ。

「俺に移しちゃえ、辛いんだろ」

喋らずに溜め込むお前よりも、苦しまない自信があった。

…なんてね、バカみたいだけど。

瑠璃はその言葉を聞いて、違うと言いたげに瞳を揺るがせ、眠りについた。
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