甘い時 〜囚われた心〜
尚人は明和へ向かった。

正門から少し離れた場所で待機する。

すると、車で帰宅する者達の中、1人で歩いて出てきた。

「さようなら…」

横についた車に挨拶をするが、誰も返事すらせず走り出す。

揺れる瞳が地面へと視線を落とした。

尚人は走り出しそうな自分を必死で止めた。

噂は本当だった…



『神楽雛子がイジメを受けている』



桜華に気づかれる前に確認しに来たのだ。

調べてみてもイジメは明らかで、ついに尚人は自分自身で確認することにしたのだ。

『全生徒からの完全なる無視』

『神楽家の送り迎えなどは一切なく、行動は常に1人』



伏せていた目を上げ、歩き出す。

小さな体が更に小さく見えていた。

見間違いか?

少し、痩せた気もする…


雛子は初めて、完全に1人ぼっちになっていた。

しかし、それは雛子があえて選んだ道。

桜華の為に選んだ道だった…
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