甘い時 〜囚われた心〜
和風の客間。

綺麗な刺繍のされた座布団。

美しい生け花。

古い掛け軸。


相手のいないまま、座布団に正座して座っている。

桜華の斜め右後方に尚人も座っていた。

しばらくして、ふすまが静かに開いた。

ふすまの奥から、険しい顔をした晋也が入ってきた。

「やっと来たか…」

晋也はそう呟きながら、ドカリと上座に腰を落とした。

桜華と尚人は、それを確認して軽く頭を下げる。

「今日は、先日の事…詫びに来たんだよなぁ?」

肘掛けに左肘をかけ、不気味に笑った。

桜華は伏せていた目を晋也に向け、怪しく笑い返す。

「今日は…正式に婚約破棄をお願いしに参りました」

そのハッキリとした言葉に晋也の顔が一層険しくなっていく。

「どういう事だ?」

「祐希奈さんとは結婚できません…理由はお分かりかと?」

苛立ちが限界を越えた晋也は、肘掛けを掴み、桜華目掛けて投げつけた。

「桜華様!」

慌てたのは尚人だったが、桜華はピンポイントで飛んできたソレを軽く避ける。

標的から外れた肘掛けは、桜華の後ろに飾られていた壺に当たり、激しい音と共に壺が粉々になった。


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