愛する人へ
「……? …………柏木(かしわぎ)……さん? ……柏木さん? あのー柏木さん?」
誰かが私を呼んでいる。
起きたく、ない……。
「柏木さん……あの、下校時間、です」
え、もう下校時間?
しょうがないなー、起きるか。
「んー……」
ゆっくりと目を開ける。
目に入ったのは、こちらを覗き込む男……子?
――――――
――グプッ
『ハァッ、ハァッ、あはっ、あははははは! 無様だなァ? お前、今の今まで俺のこと信用してたんだろ? なぁ? 一緒に逃げ切れると、そう思ってたんだろ? あぁ、美しいよ、今のお前の表情。あっはははははははは…………』
――――――
「っひっ……やだっ……!!」
――ガタガタッ
いや、いやだ、男なんて、男なんて……!!
イタイイタイイタイ…………イタイ!!
「柏木、さん? あの、大丈夫?」
「あ、あ……ご、ごめんなさいっ」
私はそのままダッと駆け出し、なぜか止まらない涙を拭いながら帰路へ着いた。
――嘘。
なぜか止まらないなんて、嘘にもほどがある。
4年前のあの日から、私は男性恐怖症になった。
