無垢な瞳
どれくらい泣き続けたのだろう。

ピアノの音が聞こえる。



ケンのピアノ？

違う。

ケンが教えたコウのピアノの音。

コウは何も言わない。

なぐさめたりなんかしない。

でもそのピアノの音は、どんななぐさめの言葉よりも心にしみた。

やさしく寄り添うような音色はコウの母の胸の温かさとよく似ていた。



「アキちゃん、もし、ケンくんに何か起こっていたとしても、私には分かるわ。あの子は絶対に立ち上がってくるわ。もししゃがみこんだとしたら、アキちゃん、あなたがそばにいてあげて。きっとあの子は自分の力で立ち上がるわ」



コウの母の言葉は力強い。

この人のどこにこんな強さがあるのだろう。

どこから湧いてくるのだろう。
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