無垢な瞳
「父さんのこと足手まといにしか思えなくってさ。だからとにかく切り捨てたかったのよ」

「父さん、今も借金抱えてるの?」

「ううん。ちゃんと破産させてきたわよ。だから借金取りに追われることもないわ」

アキはほっと胸をなでおろした。

幸の言うことはおそらく事実だろう。

しかしそれでもアキは父を切り捨てられなかった。

アキの記憶の中の父は、愛すべき優しい父でしかなかったから。

「金の切れ目が縁の切れ目って言うけど、あれってほんとよ。愛だとか恋だとかで結婚決めちゃうと、思いもしないところで、だめになっちゃったりしてね」

幸はタバコを灰皿で押し消して、頬杖をついた。
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