無垢な瞳
芝山の助言に従って、合同練習は昼休みだけにすることにした。

また、原則、放課後の練習は禁止とした。

放課後の練習は自由にしたいところだったが、塾を休んで練習に参加するものがでてきては困るという親からの抗議を予測して、自由練習は早朝のみにした。



「というわけなので、今日からやり方を変えます。みなさんよろしく」

アキは極力平静を装って言った。

一部ざわつきは起こったが、クラスの半分が受験生だ。

現実多くはほっとしているのだろう。

なんの混乱も起こらなかった。



放課後、窓の外を眺めると、塾の送迎に来た父兄の車に乗り込むクラスメイトの姿がいくつも見えた。

「なんかそれぞれ人生って違うのよね」

アキはその光景をぼんやりと見つめている。

「当たり前だろ」

「でもさ、小さい頃はそんなこと考えたこともなかったわ。みんな一緒に大きくなっていくって信じていたもの」

「俺もそうだな」

「初めて気づいちゃったね。みんな違う方向に向かっていくんだよね」

「俺ら、受験しない組だっていずればらばらになるし」

「遅いか早いかの違いか」

僕たちは、みんなが反対してくれるものとばかり思っていた。

「お願いだから練習させてください」

そんなふうに、親に直談判してくれるものとどこかで期待していた。

しかし、熱くなっているのは僕たち二人だけで、他のクラスメイトたちは冷静に人生を見極めているのだろうか。
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