無垢な瞳
「ごめんごめん、今移動したから」

「別に聞かれちゃ困る話とかじゃないんだけど」

「いいのいいの、俺、クラス発表のこととか母さんになんにも言ってないからさ、照れくさいって言うか、ばれたくないの」

「へえ、なんかかわいいとこあるじゃん」

「で、用件は何?」

「シナリオを書いていたんだけど、どういうふうに書いたらコウ君に伝わるかなって思ってさ。私たちの感覚のシナリオだと伝わらないかも知れないでしょ」

確かにその通りだ。

「それはさ、俺に聞くより、コウのおばさんに聞いたほうがいいよ」

僕は明日の帰り、コウの家にアキと一緒に寄ることを提案した。



電話を切ったあと、子機を返しにキッチンへ行く。

「ケン、今の電話のクラスの子?」

洗濯物にアイロンをかけながら母が電話の相手を知りたそうな顔をしていた。

「そうだよ、宿題のことだから」

ケンはそれだけ言うと自分の部屋へ戻ってしまった。
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