無垢な瞳
「ケン! ケン!」

父さんは人目を気にすることなどせず、ありったけの声で僕の名前を呼んだ。

「父さーーーん!!!」

僕は反対側の父の元へ必死で走った。

声が枯れて「父さん」と呼びたいのに、うまく言えない。



「父さん」

僕らは歩道橋の上で、やっと会えた。

僕は父さんの体にしがみつき、赤ん坊のように大きな声で泣いた。

今までがまんしていたものが全て体の中からあふれ出すように、僕はただただ泣いた。

父さんはあの大きな手で僕の背中を、頭を、頬をさすり、何度も何度も「ごめん」と謝り続けた。



「パパ‥‥」

一人の少女が父さんの背中を見つめて戸惑っていた。

「美佳子」

「パパ、この子誰なの? パパがいじめて泣かしたの?」

少女は不安げな表情を浮かべて、怯えていた。

美佳子という父さんの娘は、外見は十二歳くらいのはずなのに、言っていることは幼児のセリフのようだった。
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