無声な私。無表情の君。
練習を始めると次々に部員が来る。
最後に来たのは岡崎だった。
愛と会話している。
そう言えばアイツら同じクラスだったんだよな。
会話ぐらい当たり前だよな。
でも、引っかかる。
なんだか心かむず痒い。

見ててイライラする。
何だこれ。

八つ当たりにシュートをした。

ガコッ

勿論入るはずもなく、お構いなしに2人は話し続けている。
仲間外れ、か……。
そんな感じがした。

俺に見せつけて話しかけてる訳じゃないってわかってるけど…。
何か、差がある気がしてならない。
無駄に悔しかった。

そんでもって練習に集中出来ない。
ずっと愛の事ばかり考えていた。
多分メニューも今日は緩かったと思う。
俺って振り回されやすいのか?
なんとか練習に励み、頑張った。
集中力が持たない……。

「愛、長めに鳴らして」

コクリ

ビーーーーーーーー

あ、そう言えば配布物あるんだっけ?
今日の練習はもう、終わりにしよう。
俺の身体と心が持つ気がしない。
むしゃくしゃする。

更衣室で着替えていたら岡崎が話しかけてきた。

「康、今日どしたの?
ぼーっとしてるとき多くなかった?」

「…あぁ、すまない…」

「何かあったの?」

この鈍感天然馬鹿野郎め。
お前のせいで幼なじみの俺が困ってるって言うのに。
ばかばかばかばかばか。
岡崎のばか。

「ばーか」

「え、なになに、どったのよ。今日」

本当に気づいてないのか。
まあ、そうだよな。
そんなもんだよな。
悪いのは俺の強い嫉妬のせい。
岡崎のせいじゃない。
いや、5割は岡崎が悪い。

「うるさい」

何気なく強気な発言をしてしまった。

「すねてんの?よ、し、か、わ、くんっ?」

岡崎に吉川君って呼ばれると。
超違和感満載。

「完璧に馬鹿にしただろ。今」

「あ、ばれた?はははっ」

爆笑している。

「ラブラブだねぇ、いいんじゃない?
嫉妬なんてしてなんぼでしょ!」

何と言うポジティブさ。
大いに尊敬してしまう。

「ったく、こっちの身にもなれよ…」

「やーだねー。
そんな表情お堅い身体になったって得しないもんねー。
身体自体は結構柔軟なのに…。
あぁっ!身体が可哀想っ!」

「余計なお世話だ」

全くな。

「smileが足りないって!smile!」

笑顔が足りない?
これでも結構笑ってるはずなんだかな。
昨日なんか人生で1番最高に笑ったぞ?

「まあまあ、頑張りなよ。
彼女、可愛いし取られないように気ぃ張ってないと、すぐに持ってかれちゃうぞ」

「……ん」

それは正論だな。
警戒しとかないとな。

「さーて、まずは来週の試合でいいとこ見せつけることだよ!
captain!」

「…お、おう…」

岡崎のヤル気が無駄に上がった。
鼻歌交じりに出ていったんだが、なんかヤル気満々なんですけど……。
空ぶらないよな。あれ……。
ある意味怖いです。

更衣を済ませて更衣室を出るともう、片付け終わっていた。
愛がやってくれたんだろう。

あれ?その本人はどこ行った。
見当たらない。

「あんれ?愛ちゃんいなくね?」

気がついたのは岡崎だった。

「岡崎、知ってるか?」

「しーらね。誰かに連れ去られたとか?」

は?冗談じゃない。
女子からの呼び出し?
男子が連れてった?
どの道……

探し出さないと。

< 82 / 150 >

この作品をシェア

pagetop