冷血上司の恋愛論
パーキングに車を止めて藤井と向き合った。


「藤井、意地悪言って悪かったな。でも、少しくらい気は紛れただろ?どうしても辛かったら、席をはずしても構わないから」


本当は、もっと優しくどこぞの紳士かと思わせるくらいにかっこよく藤井の心のサポートしてやりたいのに、根っからの性格のせいで上手くいかない。


「ありがとうございます。でも、もう吹っ切れていますから。見返してやりたいだけですから」


藤井は、強い目で俺を見ると、俺より先にドアを開けて外に出た。


戦闘モードに入ったと言っても過言ではない。


俺も外に出ると、藤井と肩を並べてクライアントの店のドアに手をかけた。


―――チャリンチャリン


レトロな店だけあって、昔ながらの音が響く。


一歩足を踏み入れれば、鼻をかすめるコーヒーの匂い。


「いらっしゃいま…せ」


店主の男が顔を覗かせた。


俺なんか眼中にないように、絡み合う二人の視線。


店内を流れるジャズも二人には聞こえてないだろう。
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