ぼくたちはあいをしらない
03 こんばんはみらい
 茂が、目を覚ましたのはそれから3日後のことだった。

「目を覚ましたみたいね」

 美楽が、そう言ってマフラーを編む手を止めた。

「お姉さん誰?」

 茂が、そう言うと美楽はニッコリと笑った。

「貴方の命の恩人」

「え?」

 茂が首を傾げる。
 そしてゆっくりと記憶をたどる。
 勝也と轟の戦い。
 そして敗北……
 ゆっくりとおぼろげだが茂は全てを思い出した。
 だが、美楽のことは思い出せない。

「まぁ、お前が出たのはコイツが意識を失ってからだからね」

 忠雄が、そう言うと茂は少し困惑する。

「えっと、お兄さんも誰?」

「そうか、俺のことも思い出せないか……
 いや、知らないのだな」

 忠雄が、そう言ってひとりでうなずく。

「あー、茂くん意識戻った?
 それとも今は、勝也くん?」

 麻友が、そう言うと達雄たちが茂のベッドの周りに集まる。

「やっとおめざめか……」

 百寿が、コーヒー片手に現れる。

「あ……百寿さん?
 ここってちなみに何処?」

「警察病院です。
 貴方は、今まで眠っていました」

 南が、そう言うと茂はお決まりの台詞を言ってみる。

「どれくらい?」

「3日」

 南が静かに答えた。

「そんなに……」

「まぁ、心労もあったからのう。
 仕方無かろうて」

 じいやが、そう言うとゆっくりと茂の頭を撫でた。

「心労……?」

「心がつかれているって意味だ」

 百寿が、そう言うと言葉を続けた。

「すまなかったな。
 お前を、お前らをもっと早く助けれなくて……」

「……うん」

 茂は、どう答えていいかわからなかった。
 答えはいつだって闇の中……
 光のもとにある答えは嘘っぱち。
 茂は、百寿を許せない。
 でも、それ以上に無力な自分の力が許せなかった。

「百寿さん。
 僕、強くなれますか?」

「……強くなりたいのか?」

「うん。
 もう誰も傷つくところ見たくない」

「そうか……
 強くなれるかどうかは、お前次第だ」

 百寿が、そう言うと南が言葉を返す。

「百寿さん、少し冷たいですね」

 南の言葉に百寿が返す。

「そうだな。
 俺は冷たいのかもな……」

「なら、こういうのはどうじゃ?
 百寿が、茂を鍛える。
 そうすれば少しは茂も強くなれるじゃろうて」

 じいやの提案に忠雄が言葉を放つ。

「まぁ、少しだろうがそれもいいんじゃないのか?」

「じゃー、私も強くなるー」

 みゆきがそう言うと達雄たちもうなずく。

「そうだな。
 俺らも強くなって孤児院を護ろう!」

 達雄が、そう言うと百寿が小さく笑う。

「俺は厳しいぞ?」

「お願いします」

 茂は、軽く頭を下げた。
 茂は、強くなることを小さく自分に誓った。
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