水平線の彼方に( 上 )
プロローグ

幻想

今日はバレンタインデー。

毎年チョコを手作り……とはいかなくて、

一応、あの人の好きな美味しいウイスキー入りのチョコを探して、

早々と準備していた。


「沢山あっても、食べきれないよね…」

必死で作ったウイスキーボンボンを目の前にして、そう呟いた一年目の冬。

「沢山あってもいいよ。花穂(かほ)と一緒に食べればいいんだから」

笑って口に放り込んでくれた、優しい厚(あつし)…。

それ以来ーー

二人で食べられるよう、十分な量を作ったし、

買う時も、数の多い物を選んだ…。

なのに今年はーー……


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