水平線の彼方に( 上 )
ーーたわいない話をして、電話を切った。
彼の声が耳から離れず、暫くそっと耳をすましていた…。


幸せな気持ち。
こんな風に人を想える瞬間が来るなんて、あの日には考えられもしなかった…。



荒れる冬の海で、煙るような水平線を見た…。
その向こう側にあったのは、怒りと悲しみと虚しさだけだった…。

でも今は…

あの日見えていなかった、はるか彼方のものが見える…。

喜びや幸せや感動は、いつもずっと先の方にあるーーー

(だったらどうか、今日より明日が、幸せでありますように…)


心の中に広がる太陽のような温もり…。
それはまるで、ノハラが持っている雰囲気そのもので、
私はきっと、その光にいつも憧れていた…。


だからこそ、歩き出せた…。

そして、これからも、その光を信じて歩いて行く…。


水平線の彼方にある、

確かな未来を目指しながらーーー



上巻 Fin
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