スセリの花冠
……なんと可愛らしい女だ。

表情がコロコロと変わる。

愛世の、内面から滲み出る純粋さが、ディアランを新鮮な気持ちにさせる。

ディアランは逞しい身体に端正な顔立ちの男である。

女には不自由したためしがない。

さて困ったな。どうしたものか。

ディアランは天を仰いで苦笑した。

突然……本当に突然、出会ってしまった。

このディアランを本気で悩ませそうな女に。

***

アルドの広大な森を抜けると次には平原が広がり、爽やかな風が愛世の髪を揺らした。

もうすっかり日が落ちてしまい、星が瞬き始めている。

近衛兵達は数隊に分かれていて、それぞれの隊長の指示のもと野営を組みはじめている。

ディアランの隊員は、アッと言う間に大きな天幕を張った巨大な建物と、それの半分位の大きさのものを組み立て、あとの者は食事の仕度に取りかかっている。

愛世はディアランに馬から降ろしてもらうと、その光景を見て驚いた。

「凄い…」

小さく呟く愛世にディアランが話しかける。

「何が凄い?」

「え……っと……」

声に振り向いた愛世は思わず眼を見張った。

月の光を浴びたディアランが、まるで神話の中の神のようだったからだ。

なんて……素敵な人なんだろう。

一方ディアランもまた、愛世を異国の妖精のように思い、眼を細めずにはいられなかった。
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