スセリの花冠
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場所は天上界。

大国主命(オオクニヌシノミコト)は、静かに須勢理姫を見つめた。

脇息に身体を預け、庭先に引き込んだ川水の清らかな音に耳を傾けている須勢理姫は、どことなく嬉しそうである。

「須勢理?」

大国主命が彼独特の柔らかな口調で須勢理姫を呼ぶ。

「何でございましょう」

何でございましょうと答えながら、須勢理姫には分かっていた。

「…スセリノカカンはどこへやった?ここのところ、かぶっていないようだが」

ほら、きた。

須勢理姫は笑みを絶やすことなくゆっくりと瞬きをし、大きな眼で真っ直ぐ大国主命を見た。

「スセリノカカンは…差し上げました」

…またか。

大国主命は小さな溜め息をついた。

須勢理姫は愛に弱い。

悪い癖だ。

一方須勢理姫は、大国主命の滅入ったような態度に少し声を大きくし、脇息から身を起こした。

「お互いを想い合うふたりに心を打たれたのでございます。早すぎる死で愛し合うふたりを別つなど私には出来ませぬ」

これはまた……雲行きが怪しい。

須勢理姫が更に大きな声で続ける。
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