スセリの花冠
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王位継承記念日を二ヶ月後に控えたある朝、ディアランは愛世を呼んでアルファスが着る衣装の作成作業を頼んだ。

冗談でしょう?!どうして私なの…?

「他にいないの?」

するとディアランは、狼狽える愛世にクスリ笑った。

「勿論いるよ、沢山ね。けど、器用な人間が多ければ多いほど作業が早く進むだろ?愛世……まだ怒ってるのか?アルフは女の扱いが苦手なんだ。そろそろ許してやってくれないか」

…よく言うわよ、扱いが苦手なら茂みで絡み合ったりしないでしょ。

「アイツは粗野だが、真っ直ぐで男らしい奴だよ」

…どこがですか?

ああ、もう!

ディアランの頼みは断れない。

愛世は溜め息をつくと渋々承諾した。


***


宮殿までディアランに送ってもらい、愛世は通された一室でアルファスを待った。

昨日ディアランに頼まれた、アルファスの衣装作りのためだ。

…どんな顔をしていればいいのやら。

あんなことをされて傷つけられたと思えば、はたまた女性と抱き合っていたのを見てしまうなんて。

愛世はつくづく、王様という生き物が自分とはほど遠い人種だと思った。

それにしても遅いなあ……まだ来ないのかしら。
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