私と執事
→執事、庭。

仔猫の悪戯 夏

心地いい夏風が窓から滑り込む午後、危ないと私の腕を引いた彼。
庭の高い木の上で震えていた仔猫を助けようとして、何故か私が助けられる。
仔猫は私の腕の中、私は彼の腕の中。

「余計なお世話よ」
「お嬢様に何かあれば困ります」
キツい言葉と裏腹に声は安心したように優しい。
彼は私の執事。
小さな頃から両親よりも近くにいた家族。
彼が私を地面に降ろして、仔猫を私からとる。

「ちょっと、」
「捨てませんよ」

仔猫を手の上で転がして、

「怪我などはありませんね」
ふ、と微笑む。
仔猫は手の上で喉をならす、それに私は少し嫉妬して。
仔猫を離して、彼は私を見る。
優しく笑んで、

「お嬢様は、どうします?」
「え?」
「怪我なさっているか、触診しましょうか?───隅々まで」

一気に上昇する血圧に加速する鼓動。
彼は分かっているからそんな事言う。
………。
「………好きにすれば?」
「では、好きにさせて───いただきます」
仔猫のように私は抱き上げられる。

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