シローせんぱいのこと。



この声は、アヤさんたちだ。もう何ヶ月もこうしていれば、顔をみなくたって分かる。

それはシローせんぱいも同じようで、下の中庭でベンチに座る彼女へと、その視線は自然に動く。



「お腹空いた~、ごはんーっ」

「てかさっきの授業さ、アヤ超うけたんだけど!先生にチョーク投げられて投げ返すって!」

「だってさぁ、隣の子に聞かれたこと教えてただけで『喋るな!』ってチョーク投げられたんだよ?つい投げ返しちゃうでしょ!」



あはは、と聞こえる笑い声は今日も楽しげで、きれいな顔で大きな口を開けて笑うアヤさんは、とてもかわいらしい。

きれいな人だなぁ。目が大きくて顔は小さくて、整った顔をしてるのに気取ったり飾ったりしてない。



“スキな人のスキな人”、なのに、妬む気持ちにすらなれないくらい、わたしとは世界が違う人に感じる。



「えな。カレーこぼれそう」

「わっ!」



あぁっ!ぼんやりしてた!

はっと見れば、手元のスプーンからカレーがたれそうになっている。それを阻止するべく、素早くぱくっとスプーンを口に入れた。


< 27 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop