コドモ以上、オトナ未満。

バーカウンターの子供たち

「学祭の出し物、なにかやりたいものある人ー」


翌週、ホームルームで教室の前に立った真咲が問いかけても、予想通りクラスメイトはだんまりだった。

喋るのはいやだからと書記を買って出たあたしは白いチョークを手の中で弄りながら、黒板にもたれる。


ほら……やっぱり、あたしたちがクラスの代表なんて、無理あるって。

どうするつもりなんだろ、恩田先生は。

そう思って、いちばん後ろでクラス全体を見渡している先生に、ちらっと視線を送る。

すると、先生はまるで生徒の一員になったみたいに「はい」と手を上げて、こう言った。



「壁画なんてどうでしょう？」



壁画……？　壁に大きな絵を描くってこと？


「校舎の壁……というわけにはいかないと思いますが、大きな板を買ってきて、みんなでひとつの絵を作るんです。
先生、テレビでそれをやってる高校があるのを知って、憧れていたんですよね」


楽しそうに語った先生だけど、壁画の魅力がうまく伝わらなかったらしく、クラスの反応はイマイチだった。

その温度差に気づくと、先生は言う。


「あ、もちろん、皆が他にやりたいものがあれば言ってください。
ただ、人気の喫茶店、お化け屋敷なんかは三年生がすでにやることを決定してしまったようです。
それから、食べ物を扱いたい場合は腸内細菌検査があるということも考えてくださいね」


先生がそこまで道筋を示してしまえば、誰かの意見に流されやすいこのクラスの面々が出す答えはひとつだ。