コドモ以上、オトナ未満。
「両親に付き合ってる人のこととかとやかく言われるのが嫌で、最近はお正月すら顔見せてなかったんだけどね。赤ちゃん、いなくなっちゃってから、無性に頭に浮かぶんだ。自分の親……特に、母親の顔が」
「お母さんの、顔……」
「だから、どうせ迷惑かけるなら、実の親にしようかなって。いちおう成人してる私でも、あの人たちにとっては娘だもん。思いきり泣きわめいてやろうって」
冗談ぽく言った京香さんだけど、声が震えていた。
……そっか。大人の京香さんでも、彼女の親にとっては、いつまでも子供なんだ。
きっと京香さんの赤ちゃんのことには胸を痛めるだろうけど……自分たちを頼ってくれてよかったって思うんじゃないかな。
京香さんの涙が乾くまで、ずっと付き合ってくれるんじゃないかな。
だって……それが親子だもん。
あたしにはお父さんしかいないけど、ちゃんと会話をするようになった今なら、そう思える。
「あのお店にもう行けないのは、寂しいですけど……それがいいと思います。京香さんを大事に思ってくれてる人のそばにいるのが」
「ありがとう……やっぱりそうだよね。ココちゃんに背中押してもらって、会いに行く勇気出た。……次は、ココちゃんの番だね」
あたしの番……?
首を傾げると、京香さんがにっこり笑う。
「真咲くんと、仲直り」
「あ……」
……そうだった。
あたしも、向き合わなきゃならない人がいるんだ。
「……がんばって、みます」
あたしの勝手な思い込みで、疑って、ひどいこと言って、ごめんなさいって。
素直に言えば、真咲は許してくれるかな――――。