コドモ以上、オトナ未満。
「それよりココ、壁画のことだけど」
「あ、うん……」
そうだ。今日ここへ来たのはそれを話しあうためだった。
真咲が誰に片想いしてるとか、どうでもいいし……
そのことであたしが胸を痛める必要なんて全然ない。
「ココはなんか描きたいもの、ある?」
「……ない」
「はは、即答。まぁ俺も今のとこ思いついてないけど……なんつーか、こう、青春っぽいのがいいな」
「なにそれ。抽象的すぎ」
だよねー、と苦笑して、真咲はカウンターに肘をつく。
しばらく黙っていると、あたしたちの背後にある窓から、傾きかけた陽が差し込んできた。
「……今日も帰りたくねーな」
真咲はぽつりとつぶやいてから、オレンジジュースをひと口飲む。
「なんで?」
「んー、うちの両親、仲悪いから」
「……そうなんだ」
……どこの親も勝手だな。
自分たちの都合で、子供のこと振り回して。
「でも、遅くまで外歩いてたら補導されるし、俺らが自由でいられるのって、この時間だけだよね」
後ろを振り向き、夕陽に目を細めた真咲。
確かに、そうかも。
オトナみたいにお酒を飲んで、色んなことごまかすこともできない。
オレンジジュースしか飲めないあたしたちの、オレンジの時間。