コドモ以上、オトナ未満。



「……ほんとだ。ここだけちょっと上が屋根みたいになってるんだ」

あたしは、真上を見上げて言った。

貯水タンクが乗っているらしいその一段高い場所が屋根の代わりとなって、あたしたちを雨から守ってくれてる。


「なかなかイイっしょ?」

「うん。今度から雨の日授業さぼりたくなったらここ使っていい?」

「どーぞどーぞ。俺もいるかもしんないけど、それでいいなら」

「……アンタはクラスの他の奴らと違って害がないから別にいいよ」


灰色の空を見つめて、あたしは吐き出すみたいにそう言った。

真咲はあたしのことを“女王蜂”と呼ばない、数少ないクラスメイトの一人。

学校より仕事を重視してる真咲にとって、クラスの雰囲気とかそういうのは、別にどうでもいいんだろう。


「あー……ハブだもんね、岩崎さん」

「はは、あんま学校来ない真咲でもわかるんだ」

「うん。でも、全然落ち込んでないってか、むしろ集団に一人で勝ってるように見えるから、心配はしてないけどね」


集団に一人で勝ってる……ね。

あたしは戦ってるつもりなんてない。むしろ試合放棄したいくらいなのに、無関心を装えば装うほど奴らは勝手に盛り上がるのだ。


「あ。そういえば、アンタあたしと一緒に勝手に実行委員にされてたよ。十一月の学園祭の」

「……え。なにそれ」


きょとんと目を丸くする真咲。

彼の出ている雑誌を見たことがあるけど、こんなとぼけた表情で写ってる写真なんて一切なくて、プロの顔をしてた。


真咲にとっては学校が息抜きの場なのかな。

そんな場所がどこにもないあたしにとっては、少し羨ましい――。


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